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万年筆の基礎知識

万年筆を始めて使われる方も、安心してご購入いただけるように、万年筆について解説しました。

一口に万年筆と言っても、様々なタイプがあり、値段も手頃なものから高価なものまで幅広く、どれが良いのか分かり難いものです。
まずは、このページで万年筆について学んでください。

万年筆の構造と各部の名称

万年筆の各部の名称をまとめました。当店では、商品説明などにも、この名称を使わせて頂きます。

万年筆の各部の名称1
  • 胴軸・・・材料としては、セルロイド、エボナイト、木、ブラス、樹脂などが使われる。
  • 尻軸・・・吸入式の万年筆の場合は、尻軸が独立しているが、一般的には、胴軸と一体。
  • キャップ・・・万年筆では、ペン先の乾燥防止に不可欠。
  • クリップ・・・クリップとしての役割だけでなく、筆記時にキャップを尻軸に刺しておけば、回転して落下するのを防いでくれる。
  • キャップチューブ・・・気密を保つため、二重構造のなっており、内部にはインナーキャップがある。
  • 天ビス・・・クリップを固定する。
万年筆の各部の名称2
  • 首軸・・・カートリッジ式、両用式の万年筆では、首軸が取り外せる場合が多い。
  • ペン先・・・18K、14Kの金合金、ステンレスなどが使われる。
万年筆の天冠
  • 天冠・・・キャップの頭。メーカーロゴ等の刻印がある場合が多い。
万年筆のペン先を拡大万年筆のペン芯
  • ペンポイント・・・紙に接触して字を各部分で、この部分の大きさが、字幅を決める。書き易いように研磨され形が整えられている。イリジウム、オスミウム、ルテニウムを65%、白金その他金属を35%配合したイリジウム合金で耐久性は高い。
  • 切り割り(スリット)・・・この切り割りが、ペンポイントへインクを導く。ペン先に弾力を持たせる役割もある。
  • ハート穴・・・大きさ、形、位置などでペン先の持つ弾力が変わる。
  • 字幅と材質の刻印・・・ペン先には、字幅や材質を表す刻印があることが多い。
  • ペン芯・・・万年筆の心臓部。毛細管現象でインクをペン先に導く。出すぎたインクを一時貯蔵するダムの役割もある。

万年筆のしくみ

万年筆は、貯蔵したインクが、ペン芯の切られた溝を毛細管現象に移動し、更にペン先の切り割りを伝わって、ペンポイントに到達することで、初めて文字が書ける状態になります。

  • インクを貯蔵する部分・・・カートリッジ、コンバーター、胴軸など。左下の写真では、コンバーター。
  • 紙と接触し、文字を各部分・・・ペン先。
  • インクを導くための仕組み・・・ペン芯とペン先。
万年筆のペン先を拡大万年筆のペン芯

万年筆の心臓部と言えるのが「ペン芯」で、毛細管現象の源となります。 「ペン芯」は、インクの出具合(「インクフロー」と呼ばれる)を決める重要な役割を担っていますので、「ペン芯」の良し悪しが、万年筆の良し悪しを決める重要な要素になっています。
「ペン芯」には、(ペンを立てた状態で横方向に)蛇腹上に切られており、右上の写真は、軸が透明のため、首軸に隠れて見えない部分にも溝があることが良く分かります。
この溝には、多くで過ぎたインクが貯蔵され、インクフローを一定に保つ重要な役割を担います。
気温や気圧の変化により、インクの流量が変わりますので、一時的にインクを貯蔵する溝の存在は重要です。
この機能が上手く働かない出来の悪いペン芯では、インクの漏れやボタ落ちが起こる場合もあります。

「ペン先」は、字幅を決め、適度な弾力に与え、筆記時の書き味を決める重要なパーツです。
また、インクをペンポイントまで導く、重要な役割を担っています。


 

万年筆の分類

万年筆は、ペン先の材質、インクの貯蔵機構などによって様々に分類でできます。

ペン先

ペン先は、ステンレスとK18やK14などの金合金が主流です。
万年筆用のインクは、強い酸性やアルカリ性を示すものも多いので、ペン先には、腐食しにくい材質が使われますが、腐食に対する耐性では、金合金が優れています。

金合金のものは、ステンレスと比べて、当然高価ですが、金合金の方が好まれる傾向があります。
金合金のペン先の万年筆の場合、ペン先の価格が万年筆の価格の半分くらいを占めるので、大切に扱いましょう。

と言え、ステンレスも、十分な耐性を持っており、使用に差し支えはありません。
ステンレス製のペン先が敬遠される大きな理由の1つとして、ペン先に弾力が少なく、書き味が硬いことが理由にあげられると思います。

一般的に、ペン先は、弾力があり、柔らかいものが好まれます。
柔らかいペン先の方が、腕への負担が少なく、長時間の筆記に向いている事も理由の一つですが、何よりも、柔らかいペン先を持つ万年筆では、独特の万年筆らしい書き味が味わえる点が醍醐味です。

しかし、ペン先の硬い万年筆が悪いものというわけではありません。当店では、仕事上のメモなど、比較的、急いで書く必要がある場合は、硬めのペン先の万年筆の方が適していると考えます。
罫線幅が狭いノート等への記述も、長時間の筆記にならない限りは、硬めのペン先の万年筆が良いと思います。
力が入って筆圧が高くなるようなシーンでは、柔らか目のペン先の万年筆では、逆に、ストレスを感じるかもしれません。

  • ステンレスペン先・・・弾力が少なく、硬い。
  • 金合金ペン先・・・比較的、硬いものから柔らかいものまで様々。金の含有量が多いほど柔らかい傾向があるが、割金次第なので例外もある。
  • ペン先の大きさ・・・大きく長いものほど柔らかい。
  • 切り割りの深さ・・・深いほど柔らか。
  • ハート穴の大きさ・・・大きく横長のもの程、柔らかい。
  • 地金の厚さ・・・薄いもの程、柔らかい。
  • (ペン芯を包み込む)ペン先のカーブ・・・小さいもの程、柔らかい。
  • ペン先の先端部分・・・細く長いもの程、柔らかい。

変わった形状のペン先としては、下の写真のように、ペン先の大部分が首軸に隠れた「フーデッド」タイプがあります。

フーデッドタイプのペン先ペン先の大部分が隠れたフーデッドタイプのニブ

ペン芯

昔は、エボナイト製のペン芯が使われていましたが、現在は、樹脂製が主流です。
ペン芯とペン先は密着していない毛細管現象が上手く起こらず、エボナイト製のペン先には、ズレ易い欠点があるので、樹脂製のほうが使い易いと思います。

外から見える場所にも蛇腹の溝が切られている「スリット入り」と溝がない「フラット・フィーダー」があります。

スリット入りのペン芯フラット・フィーダー

なお、「フラット・フィーダー」には、ペン先が乾き難いという効果があるそうです。

インクの補充方法

カートリッジインクを使用する「カートリッジ式」か、カートリッジインクとコンバーターに対応した「両用式」が主流です。

「コンバーター」とは、カートリッジインクの代わりに差し込んで使う、インクの吸入機構で、「コンバーター」に対応したものなら、ボトルインクが使えます。
当店で取り扱う万年筆は、この「両用式」が主流になります。

カートリッジインク両用式の万年筆にコンバーターを装着


カートリッジインクやコンバーターの差込口の大きさは、メーカー毎に異なっているため、基本的にメーカー純正のものを使用する必要があります。

しかし、通称「ヨーロッパ規格(欧州共通規格)」と呼ばれる統一規格をを採用するメーカーも少なくなく、「ヨーロッパ規格」のメーカーのものなら、基本的に互換性がありますが、微妙な形状の違いで「モンブラン型」、「ペリカン型」など大別でき、必ずしも使用できるとは限らないのが現状です。

下の表にヨーロッパ規格を採用するメーカーと分類をまとめました。
ただし、製造時期やモデルによっては、ヨーロッパ規格ではない製品もあります。

分類

カートリッジインクにヨーロッパ規格を採用するメーカー

モンブラン型

モンブラン、カルティエ、ダンヒル

ペリカン型

ペリカン、カランダッシュ、デュポン、ファーバーカステル、マーレン、オマス、ロットリング、デルタ

分類不明

ウォータマン、モンテグラッパ、スティピュラ、シュナイダー、ONLINE

また、一口に「コンバーター」と言っても、インクの吸入方法は様々で、次のように分類できます。

  吸入機構 操作方法
回転式ピストンコンバーター(写真上)

ピストン式

ノブを回転させる

スライド式ピストンコンバーター(写真中)

ピストン式

レバーをスライドさせる

中押し式コンバーター(写真下)

ゴムサック式

ゴムサックを指で押す

プッシュ式コンバーター

プッシュ式

後端のボタンを押す


各種コンバーター

取り外しが出来ない「コンバーター」を首軸に装着した「コンバーター内蔵式」というタイプも存在します。

各種コンバーター

「両用式」や「コンバーター内蔵式」は、吸入機構を利用して、水を吸って吐き出す操作を繰り返せば、十分綺麗に万年筆をクリーニングが出来ますが、「カートリッジ式」の場合は、クリーニングは簡単ではありません。

加えて「両用式」は、いずれ消耗する吸入機構が「コンバーター」と言う形で取り外せますので、修理も容易に自身で出来ます。
カートリッジインクだけでなく、コンバーターを利用してボトルインクも使える「両用式」は、初心者から愛好家まで使いやすいタイプと言えます。

「カートリッジ式」や「両用式」、「コンバーター内蔵式」以外のインクの補充方法を採用する万年筆も沢山あります。

「モンブラン 149」や「モンブラン 146」、「ペリカン スーベレーン」などのように軸内にピストン式のインク吸入機構を内蔵した「ピストン吸入式」も良く見られるインクの補充方法ですが、吸引機構に軸内を占領されるため、意外とインクの容量は大きくありません。

「パイロット カスタム 823」や「ビスコンティ オペラマスター」のように、軸内の気圧を下げ、気圧の差を利用してインクを吸い上げる「プランジャー式」は、インクの容量は多いのですが、筆記時に尻軸のノブを回して緩める必要があり、操作が若干、面倒です。

軸内にゴムサックを内蔵し、外部からゴムサックを圧迫して、インクを吸い上げる「ゴムサック式」もありますが、最近は、あまり見られません。

軸内に吸入機構を内蔵するタイプは、吸入機構を利用して、水を吸い上げて吐き出すだけで、クリーニングができ便利なのですが、吸入機構のピストンや弁、ゴムサックは消耗品ですので、劣化した場合は、メーカーでの修理が必要となります。

インクの吸入機構を軸内に内蔵するタイプは、万年筆らしいインクの吸入方法を味わえるモデルですので、人気はあります。

変わったものでは、軸全体がインクタンクになっており、吸入機構は装備せず、軸に直接インクをスポイトで補充する「アイドロッパー式」や「アイドロッパー式」にインクの流れを止める機構を追加した「インク止め式」などもあり、このタイプはインクの容量が大きいのが特徴です。

ペン先のサイズ(筆記する線の太さ)

ペンポイントのサイズや形状で、筆記する線の太さが変わります。
サイズの選択は重要で、太いものでは、手帳やノートの罫線内に文字を収める事は困難ですし、手紙の宛名などは、やや太目の文字のほうが美しく見えます。

ペン先のサイズは、下の表のようなアルファベットで表記されますが、絶対的な基準があるわけではありませんので、同じFでもモデルやメーカーによって線の太さがが異なります。
また、筆圧、使用する紙、インクによっても、線の太さは変わりますので、一定して同じ太さの線が書けるというわけではありません。
縦に引いた線と横に引いた線で字幅が異なる事も、よく見られるので、書いた字の印象にもペン先の特徴が色濃く出ます。

日本のメーカーのものは、同じサイズでも欧米メーカーのものより、1段階近く細くなる傾向がありますし、欧米メーカーでも、メーカーによって線の幅には差があります。

表にある表記以外にも、FM(中細、FとMの中間)。SF(Soft Fine、柔らかめのF)と言った表記も良く見られます。
FA(Falcon、フォルカン)、MS(Music、ミュージック)など、特殊なペン先もあります。

字幅が太いもの、つまりペンポイントが大きいものが、紙と接する面積が大きくなり、単位面積あたりにかかる筆圧が小さくなるので、滑らかに書けます。
そのため、愛好家ほど、太目のものを好まれる傾向がありますが、手帳やノートの記述であれば、EF、Fあたりが無難です。
やや、太目の文字を好まれる方は、F、Mあたりを選択すると良いと思います。

選択に迷われた場合は、手帳やノートの筆記にも適し、極端に線が細くないFをお勧めします。
最初の1本の場合は、Fが使いやすくて良いと思います。

なお、当店で取り扱う中国メーカーの万年筆は、F、Mあたりの字幅のものが大半です。
表記が無いものについては、当店で判断して、参考の字幅を記載させて頂いております。

字幅

用途・特徴

EF(XF) 極細

ExtraFine。小型の手帳、システム手帳に適している。5~6mm程度の細い罫線幅のノートでも比較的、楷書で日本語が書き易い。

F 細字

Fine。手帳、システム手帳に適している。6~7mm程度の罫線幅のノートに、楷書で日本語が書き易い。

M 中字

Midium。やや太目の文字が好みの方に最適。ノートなら7~8mm以上の罫線幅のノートが楷書で書き易い。

B 太字

Broad。手紙などの宛名やサインに最適。罫線幅が大きい便箋、ノートなど。罫線幅が狭い手帳やノートの筆記には向かない。

BB 極太

Broad Broad。手紙などの宛名やサインに最適。罫線入りの手帳やノートの筆記には向かない。

BBB(3B) 極々太

Broad Broad Broad。日本語の記述ではあまり使われない。

キャップ

乾燥しやすい、染料インクを使う万年筆では、キャップの役割は重要です。
ペン先を乾燥から守り、しばらく、使用しなくとも、直ぐに筆記できる状態に保ってくれるのがキャップです。

また、キャップには、通常クリップが付いていますが、筆記時にキャップを万年筆の尻軸につける事で、机の上に置いても回転せず、落下防止にもなります。

万年筆のキャップは、螺子式と嵌合(かんごう)式に大別できます。

螺子式のキャップを採用する万年筆は、軸に螺子溝が切られており、回転させてキャップを取り外します。
気密性が高く、長時間、ペン先の乾燥を防ぐ事ができますが、キャップの取り外しにやや時間を要しますので、さっと書けるスタイルの万年筆ではありません。
螺子式のキャップの場合は、1回転~2回転程度で取り外せるものが使いやすいと思います。

対して嵌合(かんごう)式のキャップは、パチンとはめるだけの普通のキャップで、取り外しが楽です。
勢い良く外すと、キャップを外す際に生じる負圧で、インクが飛び出す事がありますので、通常、気密性は、やや低めに設計されており、ペン先は、螺子式のものと比較して乾燥しやすいと言えます。

キャップの性能の如何に関わらず、長く使わないでいると、ペン先が乾燥して書けなくなりますので、キャップに頼らず、できるだけ毎日、万年筆を使う事が一番良い乾燥防止になるでしょう。。

螺子式のキャップ嵌合式のキャップ