万年筆の相棒(インク、紙、小物)
万年筆に欠かせない、インクや紙、ペンケースなどの小物についてまとめました。
インクや紙は万年筆に不可欠なだけでなく、相性の良いものを見つけることも重要になります。
また、大切な万年筆を保護するペンケースや手帳カバー、システム手帳といった小物も、万年筆ライフを彩る重要なアイテムです。
インク
基本的に、メーカーは、自社のインクを使用した場合を想定して、問題が起こらないように配慮し、設計や使用する材質を決めます。
インクは、純正のものを使用するのが基本ですし、他社のメーカーのインクを使用した場合は、問題が起きないとは言い切れません。
しかし、純正のインクだけでは、色の種類が限られますので、他社の魅力的なインクやインク専門のメーカーのインクを使う方も少なくありません。
お気に入りのインクを見つけることは、万年筆の醍醐味であり、非常に楽しい事ですが、リスクがあること、自己責任で行う事を忘れてはいけません。
万年筆用のインクは、カートリッジまたはボトルの形で販売されていますが、ボトルインクは、カートリッジ互換性を考慮する必要はありませんので、利用しやすいインクでもあります。
両用式の万年筆をお持ちの場合は、ぜひ、ボトルインクをお試しください。
古くからあるブルーブラックインクの他、水性染料や水性顔料を使用したインクがありますが、「水性染料インク」が扱いやすく、比較的、万年筆への負担も少ないインクといえます。
実際「水性染料インク」は、市販のインクの中でも、最も色の種類が豊富で、最も良く使われるインクです。

ブルーブラックインク
「ブルーブラックインク」とは、第一鉄イオンが酸化して第二鉄イオンになり黒色沈殿を生じる酸化作用を利用したインクで、化学反応により紙にインクが定着するタイプのインクです。
紙に定着するとインクの色が青から黒に変化する事から「ブルーブラックインク」と呼ばれます。
一旦、紙に定着すると優れた耐水性、耐光性を示し、長期保存に向くと言われていますが、インク自体が強い酸性を示すため、紙を痛め易く、長期保存向きではないと言う意見もあります。
取り扱いが面倒なインクで、一旦、黒色の沈殿物を生じてしまうと水では洗い流せないため、万が一、万年筆の中で固まってしまうと、まず、部品交換以外に修理する方法がありません。
固まらないまでも、目詰まり等は発生しやすいので、頻繁な万年筆の洗浄が欠かせません。
その取り扱いの難しさから、現在の販売されている多くの「ブルーブラックインク」は、遥かに取り扱いが簡単な水性染料を利用したタイプになっています。
水性染料タイプの「ブルーブラックインク」と差別化するために、前者の「ブルーブラックインク」は、「古典的ブルーブラックインク」と呼ばれ、現在、主要メーカーから発売されている「ブルーブラックインク」の中では、モンブラン、ペリカン、ラミーの「ブルーブラックインク」が「古典的ブルーブラックインク」だと言われています。
水性染料タイプの「ブルーブラックインク」も、混合された水性染料のうち、一部の色が褪色する事で、「古典的ブルーブラックインク」同様に、色の変化が起こりますが、水に溶ける水性染料を使用していますので、お手入れは遥かに簡単になります。
水性染料インク
水に溶ける水性染料を利用したインクで、お手入れが簡単と言うメリットはありますが、耐水性、耐光性に乏しいものが多く、長期保存に向いているとは言えません。
お手入れが楽で、トラブルも少ないことから、現在は、最も良く使われる主流のインクです。
様々な色の水性染料インクが発売されていますので、使い分けが面白いインクでもあります。
現在、発売されている「ブルーブラックインク」の多くも、このタイプが殆どです。
当店も、このタイプのインクを使用される事をお勧めします。
ただし、一旦固まると、簡単には水に溶けませんので、万年筆を壊さないためにも、定期的なお手入れが必要です。
水性顔料インク
顔料を使用したインクで、溶けているのではなく、コロイド状になっています。
墨汁を想像すると分かりやすいかもしれません。
長期保存に向くインクですが、一旦固まると水に溶けませんので、お手入れが厄介なインクでもあります。
使用される場合は、頻繁な万年筆の洗浄が欠かせません。
インクの性質
市販のインクは、メーカーや種類よって、かなり性質が異なります。
単に色だけでなく、滲み易さ、裏抜けし易さ、インクフロー(インクの出方)、乾く速さ、濃淡の出方、耐水性、耐光性など様々な要素で、使い勝手が決まります。
インクの性質は、使われる材料の他、pH、粘度、表面張力、比重で決まると言われていますが、メーカーは、上手くバランスを取って個性的なインクを作り出しています。
pHは、万年筆への負担を左右しますが、インクは、強酸性のものから、強いアルカリ性のものまで広く分布しています。
ペン先にステンレスや金合金が使われるのは、インクによる腐食から守るためですし、異なるインクを混ぜてはいけない理由の1つが、中和反応が起こる可能性があるからです。
インクには、インクフロー(インクの出方)が良いもの、悪いものがありますが、主に、表面張力の影響が大きいと言われています。
界面活性剤を加えて、表面張力を下げれば、インクフローは良くなりますが、下げすぎると、紙に深くインクが浸透し、インクの裏抜けの原因になる場合もあります。
また、書き味を決めるのは、粘度といわれており、粘度の高いものは、書き味が良いと感じることが多いようです。
しかし、あまり粘度が高すぎてもインクとして機能しなくなってしまいます。
乾きの遅いインクを使うと、書いて直ぐにノートを閉じるとノートを汚す結果になりますが、ある程度、乾燥までに時間が掛かることによって、万年筆を乾燥から守っているとも言えます。
使う側にとっては、インクの耐水性や耐光性も需要ですが、これもインクによってかなり差があります。
残念なことに、現在市販されているインクの中には、完璧なインクなど無く、完璧なインクを作ろうとするとパラドックスに陥ってしまいます。
要は、バランスで、自分なりにバランスが良いと思うものが最適なインクではないでしょうか。。
紙(ノート、手帳、日記、メモ、便箋)
万年筆には、ノート、手帳、メモ、便箋などの紙が欠かせませんが、意外と万年筆での筆記に適した紙は多くありません。
まず、インクが滲み易い紙は使いやすいとは言えません。
逆に滲みを楽しむ使い方も悪くはありませんが、手帳や日記では大敵でしょう。
続いて「インクの裏抜け」。紙にインクが浸透して裏側まで抜けてしまう現象です。
これも、極力少ない紙の方が使いやすいと言えます。
紙の繊維の状態や表面の処理方法は、書き味を左右しますが、好みのものを選べば良いと思います。
また、紙の厚みは、筆圧を殆ど必要としない万年筆では、薄くても問題ありませんので、用途や好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
モレスキン(Moleskine)
イタリアの「Moleskine」社が販売する有名な手帳、日記、ノートを指します。
モールスキン、モレスキーネと呼ばれる場合もあります。
ゴッホ、ピカソ、ブルース・チャトウィンなどの著名人の愛用品として有名ですが、当初、モレスキンを製造していたフランスのメーカーは、製造を中止しており、現在、販売されているのはイタリアの「Moleskine」社による復刻版です。
丈夫な糸綴じ製本で、ノートを閉じるためのゴムバンドが付いており、どのページも、180度水平に開き、使いやすいノートですが、万年筆で書いた場合、滲みやインクの裏抜けが起こりやすい欠点があります。
日記帳、ノート(無地、罫線、方眼)など、様々なスタイル、サイズのものが販売されており、用途に合わせて選ぶ事ができます。
高価な割りに致命的な欠点があるにも関わらず、書き易く、使い易い為、万年筆愛好家の中にもファンが多く、インクフローの悪い細字万年筆とインクフローの悪いインクの組み合わせで書くなど、モレスキンに合わせて、万年筆側を工夫されている方も少なくありません。
モレスキンの代わりとなるものが無いという点も、愛されている理由の一つだと思います。
下の写真は、モレスキンのダイアリー(ソフトカバー、ラージサイズ)になります。

ロディア(RHODIA)
ロディアは、フランスのメーカーの製品で、ノートなども出していますが、最も有名な製品は、ブロックメモです。
しっかりした台紙が付いているため、手に持ったスタイルでも筆記でき、切り取りやすい特許のミシン目が付いています。
使われている紙は、かなり白いもので、万年筆との相性もよく、滲みが殆ど無く、万年筆本来の筆記線が出せる紙かと思います。
様々なサイズが用意されており、用途に合わせて選ぶ事ができますし、表紙には「オレンジ」と「ブラック」の2色があり、どちらもお洒落です。
方眼と罫線などの種類がありますが、メモとしては、方眼が使いやすいと思います。

トラベラーズノート
「トラベラーズノート」は、「ミドリ」ブランドのノートを製造する「デザインフィル」社の革カバー付きノートです。
通常サイズとパスポートサイズの2種類があり、ノート部分は、交換可能なリフィール形式になっており、リフィールの交換で長く使えノートです。
リフィールには、日記、罫線ノート、方眼ノート、無地ノートの他、画用紙やジッパーケース、名刺ファイルなどもあり、用途に合わせたカスタマイズも可能です。
旅行者向けと言うコンセプトですが、色々な用途に使える多目的ノートと言えると思います
通常サイズのリフィールには、日記用に開発された「MD用紙」が採用され、やや厚みがあり、万年筆だけでなく、様々な筆記具で書きやすくなっています。
パスポートサイズのリフィールには、手帳用に開発された「DP用紙」が採用され、ミシン目が入った切り取り可能な薄手の紙ですが、インクは、裏抜けし難く、万年筆とも相性の良い紙です。
下の写真は、通常サイズとパスポートサイズのリフィールです。

大学ノート(普通ノート)
コクヨのキャンパスなどの上質紙を使用したノートは、価格も安く、入手しやすいので普段使いのノートしてオススメです。
多目的に使え、様々なサイズのものがありますが、標準的な大きさのものは、B5判になります。
A7、B7、A6、A5などのコンパクトなノートや、より大きなA4サイズのものなど、充実していますので用途に合わせてサイズを選べる点も嬉しいです。
罫線の幅も数種類用意されている事が普通で、無罫、方眼タイプなどもあります。
下の写真は、コクヨのキャンパスのB5サイズとB5スリムサイズです。

ペンケース、システム手帳、カバー
大切な万年筆を携帯する場合は、丈夫なペンケースに入れたほうが安全ですし、メモやノートにもカバーを付けると随分イメージが変わります。
無くても良い物ですが、小物は、万年筆に彩を添えるアイテムですし、出来れば拘って選びたいものです。
ペンケース(ペンシース)
ペンケースは、大切な万年筆を携帯する場合には、不可欠なアイテムです。
裸のまま持ち歩いたり、他の筆記具と一緒にすると、軸が傷つく場合もありますので、出来れば専用のケースを用意したいものです。
一口にペンケースと言っても形状は様々です。
下の写真のような、革製のフラップ付きのペンシースタイプですと、確り万年筆を保護できますし、複数入るタイプでも、仕切りがあれば、1本ずつ独立して収納できます。
沢山、持ち歩きたい場合は、ロールタイプや、折り畳みタイプも便利ですが、収納部分からはみ出した軸同士が接触するタイプもあるので注意が必要です。
軸同士が接触しないようにフラップが付くなど、工夫があるタイプのものが良いと思います。

手帳カバー、メモカバー
手帳やメモにカバーを付ける方も少なくありません。中身の手帳を保護する役割もありますが、どちらかと言えば、見栄えの問題ではないでしょうか。
革製のカバーが人気ですが、大きなサイズのものは、それなりに値段も高くなってしまいます。
そこで、オススメはブロックロディアケースです。#11サイズ用のものなら、大きくなりませんので革製のものでも比較的お手頃な価格で購入できます。
下の写真は、#11用のブロックロディアケースです。ブロックロディアの場合は、正直、ケースを付けない方が使い勝手が良いのではないかと思いますが、見栄えは良くなりますし、使っていても楽しいものです。

システム手帳
日本では1990年代に流行した、バインダー式で用紙の入れ替えが簡単な手帳です。
システム手帳は、用紙(リフィール)が様々で、大きさと穴の数で大別はできますが、明確な規格はなく、用紙に応じたシステム手帳が必要となります。
しかし、大手メーカーから発売されるミニ6穴サイズ、バイブルサイズ(6穴)、A5サイズ(6穴)などのリフィールは、デファクトスタンダードになっており、メーカーが異なっていても基本的に互換性があります。
ですから、バイブルサイズの手帳を買えば、基本的にメーカーを問わず、バイブルサイズのリフィールが利用できます。(ワイドサイズもあるので要注意。)
バイブルサイズといっても、あくまで用紙の大きさの事で、用紙のサイズに合わせて大きさの手帳もあれば、ずっと大きなものもあります。
また、リングの径も収納力やサイズを左右する要素です。
万年筆と組み合わせる場合は、バイブルサイズが使いやすいのではないかと思います。