万年筆の選び方
現在では、万年筆は、あまり使われる事のない筆記用具になっていますが、それでも世界中には沢山の万年筆メーカーが存在し、様々なの万年筆が発売されています。
沢山の万年筆の中から、用途に合った1本を探す事は、そう容易な事ではありません。
このページでは、万年筆選びのポイントについてまとめました。
万年筆を購入される際の参考としてお役立てください。
最近は、パソコンの普及により、筆記用具自体を使う機会が減ったためか、欠点を持ちながらも、文字を書くことを楽しめる「万年筆」が見直されています。
大人の嗜みとして、趣味として、実用として、万年筆を使われる方も多いのではないでしょうか?
そのため、雑誌やネットを通じて、万年筆の情報を得る事も容易になってきました。
これらの情報を参考にした結果、ペン先が柔らかく、インクフロー(インクの出方)が良く、太字で、滑らかに書ける万年筆を求められる傾向が強いように思います。
所謂、「ヌラヌラと書ける万年筆」です。
ペンポイントの大きい「太字」の万年筆は、紙との接触面積が大きいため、ペン先に掛かる力が程よく分散し、結果、紙との摩擦の少ない滑らかな書き味が得られます。
加えて、インクフローの良い万年筆なら、ペン先がインクの上を滑るような感覚が味わえます。
ペン先が柔らかいものは、ボールペンには無い、独特の柔らかいタッチが味わえ、如何にも万年筆らしい書き味になります。
しかし、ちょっと待ってください。
確かに、「ヌラヌラと書ける万年筆」は、サインや英語の筆記体、字体を崩した日本語の筆記には向いていると思いますし、万年筆の醍醐味でもあります。
もし、楷書で日本語を書かれる場合はどうでしょうか?
楷書では、画数の多い漢字も1画ずつ正確に、分離して書く必要があります。
そのため、ペンポイントが小さく、字幅が細いものが向いてます。
漢字は、曲線で構成されるアルファベットと異なり、直線的で、時には、90度折れ曲がったりと、文字の本質が全く異なります。
この場合、滑らかに書ける万年筆よりも、多少、紙と抵抗を感じる万年筆の方が書き易いかもしれません。
どちらが良い悪いではなく、結局は用途次第と当店は考えます。
店長の私自身も、楷書で書く日記や手帳には、細字の書き味を楽しめるようなタイプではない万年筆を使っています。
また、アイデアや情報を仮にまとめておく、雑記帳には、やや太目の字幅で、ペン先が調整されたインクフローの良い万年筆が合うように思い、用途に応じて使い分けています。
しかしながら、万年筆の良し悪しは、あくまで個人的な基準。正解はないと思いますので、皆さんも、自分なりの良い「万年筆」を探してみてください。
失敗も多いですが、気に入った万年筆を探すのは楽しいものです。
ペン先(ニブ)の硬さ
ペン先の硬さは、感覚的な意味合いのもので、紙あたりが良く、ペン先に弾力があるものを「柔らかい」と表現する場合が多いようです。
ペン先の硬さは、ペン先の材質のみで決まるものではなく、ペン先の厚み、加工によっても大きく左右されます。
また、インクフローの良いもの、ペンポイントの大きなものは、実際にペン先の持つ弾力以上に柔らかく感じられる場合があります。
ステンレス製のペン先を持つ万年筆は、比較的、カリカリとした硬い書き味のものになりがちですが、金合金のペン先を持つものは、柔らかなタッチになります。
しかし、ペン先先端部の形状、切り割りの長さ、ハート穴の形状と大きさ、ペン先全体の曲がり具合などもペン先の硬さを大きく左右しますので、例えペン先の材質が同じでも、その他の要素が異なれば、感じる硬さには、かなり違ったものになります。
一般的には、長時間筆記しても疲れにくい、柔らかいペン先のものが好まれますが、あまり柔らかいものは、日本語が書きにくくなりますので適度なコシも必要です。
また、楷書体で記述する場合は、やや硬めのペン先の方が使いやすいのではないかと思います。
楷書体での手帳やノートの記述に使われるのであれば、ステンレス製のペン先のものも悪く無い選択かと思います。
リラックスした状態で、アイディアやラフをまとめたり、手紙や日記を書いたりする場合は、金合金のペン先で、柔らかく、適度にコシがあるものを選ばれると良いでしょう。
筆圧が強い方は、やや硬めペン先の万年筆の方が使いやすいかもしれません。
ペン先の柔らかい万年筆の中には、筆圧でペンポイントが開きやすい万年筆もありますが、筆圧によって字幅が変化してしまいますので、使いにくい場合もあります。
この点は、筆圧がそれほど強くない方でも、要注意です。
特に楷書体で書く場合は、無意識に字幅を予想して書いているはずですの、突然、字幅が変わると文字のバランスが崩れてしまいます。
最近の傾向として、中程度からやや硬めのペン先を持つ万年筆が多く、柔らかいペン先を持つものは、少なくなっています。
| ペン先の硬さ | 用途・特徴 |
| 硬いペン先 |
楷書体での手帳やノートの記述に最適。字幅が小さなEF、Fクラスのペンポイントのものと組み合わせると良いと思います。 |
| 中程度の硬さのペン先 |
色々な用途で使えます。最近の万年筆は、この中程度からやや硬めのものが多くなっていますので、現在の筆記スタイルでは、最も実用的な硬さなのかもしれません。 |
| 柔らかいペン先 |
ぜひ、書き味を楽しみたいですね。太目のFかそれ以上の字幅で、インクフローが良いものを選ばれると、より書き味が良くなります。
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字幅
字幅は、ペン先のペンポイントの形状と大きさによって決まりますが、インクフローが良い場合は、若干、それより太くなる場合もあります。
日本語の筆記に適しているのは、極細(EF)、細字(F)クラスでしょう。
楷書体で、手帳やノートを記述する場合は、このクラスでないと使いにくいと思います。
また、書き味を楽しまれたいなら、やや字幅が太い中字(M)以上が良いと思います。
手帳の筆記には向きませんが、罫線幅の広いノートや便箋なら問題ありません。
手紙の宛名などは、ある程度の字幅がないと、逆に品祖に見えてしまいます。
字幅表記に関する注意点ですが、日本のメーカーの字幅は、表示が同じでも、海外メーカーのものと比較して、若干字幅が細くなる傾向があります。
例えば、日本メーカーの中字(M)は、海外メーカーの細字(F)相当である事も珍しくなく、1段階程度差が生じます。
字幅の表記は、あくまで、メーカーやモデル内での相対的な字幅の太さを表すもので、絶対的な基準ではありません。
あるメーカーの細字(F)の方が、別のメーカーの中字(M)よりも太いという事も良く見られます。
ですから、同じFでもメーカーやモデルによって、字幅にかなりの差が生じます。
下の画像は、細字(F)の表記がある万年筆で、実際に筆記した筆記線です。方眼の幅は5mmになっています。
上から「パイロット カスタム 823 F」、「ペリカン トラディショナル M200 F」、「パーカー ソネット F」、「ペリカン スーベレーン M800 F」となっており、下へ行くほど筆記線が太くなっているのが分かるでしょうか?
一番上と、一番下では、同じ細字(F)でも、随分筆記線の太さに差があることが分かると思います。
一番下のものは、殆ど、中字(M)に近い字幅があり、日本メーカーの基準では、太字(B)寄りの中字(M)となるでしょう。
当店で販売する中国メーカーの万年筆は、画像の下3つ程度の字幅のものが多く、一番上のような極端に線の細いものは、まず御座いません。
また、中字(M)を超える、字幅が太いものも、まずありません。
字幅の表記があるもについては、おそらく欧米メーカーに準じた基準で分類されています。
当店では、字幅の表記が無い製品については、欧米メーカーを基準に独自に字幅を判定して記載しております。
商品ページでは、実際の筆記サンプルも用意していますので、そちらを参考にしてください。
軸の太さ、長さ、重さ、重心
軸の太さや重さ、重心の位置などは、使い勝手を左右する重要な要素です。
手に馴染む万年筆は、使っていても疲れません。
机の上でリラックスして使うような万年筆は、太目の軸の方が握りやすいかもしれません。
また、重心の位置も重要です。
重心の位置が自分にあっているなら、例え大型で重量のある万年筆でも、疲れないはずです。
持ち歩いて、メモや手帳に使うような万年筆の場合は、細身で小型のタイプが携帯に便利です。
さっと取り出して書くようなスタイルの場合は、重心を感じないほど軽量のものの方が、取り回しが楽で使いやすいと思います。
かといって、軸が細すぎたり、短すぎるものは、持ちにくい場合があるので、バランスが重要になります。
万年筆の素材には、ブラス(真鍮)、アルミなどの合金、金、銀などの貴金属、樹脂が使われますが、樹脂製の万年筆の方が重量は軽くなります。
樹脂と言うと安っぽく聞こえるかもしれませんが、高価な万年筆でも樹脂製のものが多く、セルロイドやエボナイト(ゴムの一種)が使われている場合もありますし、プラスチックに分類されるような樹脂が使われる場合でも、成型ではなく、削り出しだったりと手は込んでいます。

デザイン
デザインは、「書く」という機能に関しては、あまり関係の無い要素ですが、デザインの良し悪しで、その万年筆への「愛着」が変わってくると思います。
万年筆は、長く使える筆記用具ですから「愛着」の持てる、気に入ったデザインのものを購入したものです。
やはり、気に入った万年筆を使うときは、気分も違いますから、デザインに軽視すべきではないでしょう。
日本やドイツの万年筆は、如何にも万年筆といった感じの保守的なデザインのものが多くなっています。
一方で、ドイツには、バウハウスの影響を受け、近代的な工業デザインを取り入れた万年筆もあります。
アメリカの万年筆は、実用本位で使いやすいデザインのもの、イタリアの万年筆は、感性に訴えるお洒落なデザインのものが多くなっています。
中国の万年筆は、アメリカ時代のパーカーを受けたものや、ヨーロッパーの影響を受けたもの、細工の凝った中国的なものと多岐に渡っています。

悩んだら・・・
気に入ったものが一番ですので、デザイン優先で選んで頂いて問題ありませんが、字幅にだけは注意してください。
普段、使われている筆記用具がボールペンなら、極細(EF)や細字(F)のものが違和感が少なく良いと思います。
勿論、いきなり太字(B)を購入されて結構ですが、用途は限られると思います。
購入したけど、使い道がないと仰る方は、これを機会に日記を付けられると良いと思います。
購入される日記は、本格的なものより、やや小さめの物の方が継続しやすいと思います。
あまり罫線の幅が狭いと書きにくくなるので、罫線幅は、7mm程度は欲しいですね。
1日、数行程度の記録でも良いと思います。
罫線を無視して、太字の万年筆で書いても全然、問題ありませんので、思いっきり書いてください。

